顧客第一主義は従業員こそ大切だからという理由が閉店してわかった

顧客第一主義を掲げていた会社が資金繰りの厳しさから顧客第一主義を貫き通せなくなった。

顧客第一主義を思いながら仕事をしなければお店の明日もない。

そういう現実の中でいかに顧客第一主義を貫くか?

それでも
閉店にいたって顧客第一の目的は従業員こそ大切にするべき存在と気づいたワタシの体験です。

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顧客第一主義に働く

ワタシがその会社に応募したのは経営理念に感銘を受けたからです。

 

前の別の会社にいた時にコンサル会社の縁でその会社の朝礼を見学した。
朝礼で全員が経営理念を唱和していた。

 

その顧客第一主義を掲げた経営理念はワタシには羨ましかった。
当時、ワタシは何のために仕事をしているのかを見失っていたから。

 

自分の働きがお客様の喜びにつながる。
羨ましい道だと思った。

 

その後
前の会社を辞めて次の仕事、会社を選ぶ時に迷った。
持っている知識を活かす同業界の方向か、その経営理念の会社か。

 

結局、募集をしていないその会社に応募書類を送り採用していただいた。

 

その会社は今はもうありません。

でも
ワタシには今も理想とする会社です。
従業員の働きがお客様の喜びにつながる。
ワタシは今もそれを目指しています。

でも今
ワタシの働きは顧客第一主義ではあるけれど
その前に従業員最上主義にあります。

 

それは
ワタシが今も理想とする会社が破産し
ワタシが本店の最後の店長となってわかったからです。

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顧客第一主義って何だろう

ワタシが本店の最後の店長となった年のことです。

 

顧客第一主義を掲げながら、とてもお客様を満足させる売り場ではなかった。
営業を継続するために在庫を厳しく調整して資金繰りを優先していたから。

 

誰しもが思っただろう。
「何のための仕事?」
「誰のための仕事?」
「毎日唱和している経営理念は何?」

 

顧客第一主義を掲げる経営理念に集った従業員です。
これまで経営理念を唱和しお客様の喜びに尽くしてきた仲間です。

だから
なおさらのことモチベーションは下がる。

 

自身が思うようなお客様に喜んでもらう売り場を作ることができない。
誇りなんて持てるわけがない。

 

店長であったワタシも荒れた。
元々、短気な上に狭小な器なのに。
今で言えば、パワハラまがいのことは日常茶飯事だった。
トップとも衝突した。

 

それでもお客様は来ていただいていた。
こんな売り場でも来ていただける。
「ありがたい」の一言でしかなかった。

 

どうして自分の気持ちやスタッフのモチベーションを維持したらいいんだろう。
毎日考えていた。

 

ある日ふと思った。

たくさんのお客様のこと、将来の不安、これまでの実績、ライバル店との競合
そんな自分の容量を超えて出来もしないことを考えているから無理があるんじゃないか?

今できることは何だろう?
確実にできることはなんだろう。

 

毎日のお客様とのやり取りで見えてきたことがある。

 

「今、目の前の一人のお客様にできることを精一杯しよう」

心が軽くなった、晴々と感じられた。
これだったら思いっきりできる。

「今、目の前のお客様にできることを精一杯する」

そう思ってから、ワタシは少し変わった。

それまで高圧的な店舗運営をしてきたのがみんなの意見を聞くようになった。
方針だけを決めて、方法は任せるようになった。
アルバイトさんを信じて夜間の店舗運営やシフト管理を任せた。

 

すると、どうだろう。

みんなワタシが思っていたよりずっと素晴らしい仕事をする。

 

ワタシは自分の存在はもういらないと思った。
ワタシがいなくても店舗運営はできる。
ワタシの人件費分利益が助かる。
最初に店を去るべきはワタシだな~って思ってた。

売上も利益も資金繰りも厳しい時が続く。

 

バレンタインデーが近づいてきた。

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今できるバレンタインデーイベント

新規出店した競合店は強力だった。

オープン時にはホールケーキを先着200名に無料プレゼントしていた。
そういうイベントは新鮮で衝撃的だった。

地域No1の売り場面積を誇っていた本店も同規模の大型店の出店で影響が出てきた。

 

かたや、ワタシのいる本店は販促予算などない状態だった。

 

そんな状態でバレンタインデーが近づく。

バレンタインデーが盛んな頃は同じ年商の食品スーパーの数倍のチョコレート売上もあった。

 

その時はバレンタインデーイベントも退潮傾向で毎年縮小する状態だった。

 

でも何かお客様に喜んでいただけることはないだろうか?
お金をかけずに喜んでいただけるバレンタインデーイベント。

ワタシができることはこんなことしかなかった。

「10円のチョコを500人のお客様に1人1個プレゼントする」
ただし、それだけではつまらないので1個1個パッケージを変えるというもの。

 

ささやかなイベントです。
業績にも影響しないイベントです。
でも
日頃のご来店に感謝を伝えることができるイベントです。

 

女性スタッフも賛同してくれました。

 

1個10円を500個で5000円分のチョコを仕入れた。
1個1個、別々のプレゼントチョコのオリジナルパッケージが始まった。

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人が輝くということ

お店の販売員

1個1個、別々のプレゼントチョコのオリジナルパッケージが始まった。

 

チョコの予算はワタシの決済、責任で出来ましたがワタシはアイデアを出しただけで後は何もしない。

 

ほとんどが女性スタッフ10人くらいでやることになった。
一人50個はつくらないといけない。

すべて違うパッケージだから色、柄の組み合わせ、材料の包装紙の準備はなかなか大変です。
組み合わせがたくさんできるように多種類の紙を用意する。
サイズに合わせて紙を切るのも手間です。

 

文具・雑貨担当だったKさんが準備を進めてくれました。

 

Kさんは文具・雑貨担当の中でも控えめだった人です。
それまでリーダーシップのある他の担当から指示を受けて仕事をしていました。

 

この500種パッケージは長丁場でした。
昼の休憩時間を犠牲にしないといけない。
女性スタッフ全員が協力しないとダレたり、行き詰まったりすることも懸念された。

Kさんの献身的な準備とリーダーシップにみんなが自然と協力してくれる。

ありがたいな~

Kさんにも女性スタッフ全員にも頭が下がった。

 

3人のお子さんを持つKさんは子供さんがよく病気で欠勤してた。
それが仕事に対する責任感が出てきて全く休まなくなった。
それでもバリバリと仕事をこなすわけでもなかった。

 

それなのにあれほどみんなに影響を与えて
手間のかかる500種パッケージを終えてくれた。

すごいなって思った。

人が輝くってこういうことなのかな?
人が輝くって美しいなって思った。

こういう体験は10年に1度くらいしかないものです。

バレンタインデー当日500個のプレゼントチョコは惜しいくらいに早くなくなった。
みんなの働きの結果の形あるものがあっという間になくなっていく。

お客様にすれば、たかが10円チョコ
でもみんなにすれば心を込めた10円チョコ。

 

お客様にどこまで伝わったろう~。
少しさみしい気がする。

 

500種パッケージをやってくれた女性スタッフに感謝の気持ちを伝えたかった。

ホワイトデーにどのようにして報いてあげたらいいだろう。

 

年に1回の年度方針発表会があった。

 

辞令が降りてワタシは本店店長と支店の店長の兼務となった。
他の支店の店長が店長代理、次長として3名異動になって入ってきた。

 

トップと衝突し、トップの思うような本店の店作りをしないワタシの事実上の異動です。
本店店長の肩書を残しておいたのは思いやりからでしょう。

 

本店店長でありながら本店の運営にはもはや口出しできず
私のいる場もなくなってきた。

本店を店長代理、次長に任せワタシは
支店の改善に取り組むように重点を移していった。

3月の中旬以降には支店に常駐することになるだろう。

 

本店に寄って支店に出向く日が続く。

支店の改善は楽しかった。
自分の思うようにレベルが上がる。

今まで狭いくらいのバックヤードの整理をすれば
ガランとした空間が出てくる。

作業が効率化して時間が余ってくる。

本店とは違ってもっと近い関係でスタッフと話ができ仕事が進められる。

 

3月に入りホワイトデーのことを考えた。
500種パッケージのお礼はどうしよう。

 

あるケーキショップで女子スタッフ全員分のケーキを注文した。
そしてKさんの分だけはちょっと大きくてイチゴがたくさん乗ったものにした。
送り先は「本店Kさん」宛て「チョコをもらった500人より」という送り主で配達にしてもらった。

 

3月14日にも本店に寄った。
今日は早く本店から支店に移動しなければ。
ケーキの配達される時に本店にいるのは照れてしまうから。

 

本店から支店に向かう車の中で電話を受けた。
「今すぐ、本社に来てください」
ただならないことだけはわかった。

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閉店してわかったこと

掃除する店員

本社について営業が停止になることがわかった。
先月の支払いが不足したからだ。
取引先から品物は送られてこない。
それは事実上の取引先による強制的営業停止です。

 

以前から度々言われてきたことだ。
都度、リストラなどの要求をのんでつないできた。
取引先は見切ってしまった。

 

そこから先はあまり良く覚えていない。

迷惑をかけた取引先から詰め寄られ
強制的営業停止に持ち込んだ取引先に詰め寄り
各支店に営業停止と整理作業の案内をした。

 

全店舗が顧客第一主義で行動していた。
お客様に渡すべき商品を営業停止中でも渡すように連絡した。
定期的な注文は近くの競合店に注文を切り替えてもらうように案内した。

 

主要な取引先が商品を引き上げに来た。
少額取引先は商品引上げも出来なかった。
そんな不公平も混乱でまかり通った。

 

取引先を大切にし、顧客第一主義でやってきたことは何だったのか?
厳しい在庫コントロールで思うような売り場も作れずにいたことは何だったのか?

 

ワタシは支店の閉店処理で文書の裁断や店舗の片付けを行った。
残りの有給休暇を取りたいという人には出勤扱いで休んでもらった。
有給を消化できなくてもいいという人だけ閉店処理を手伝ってもらうことにした。
半分ほどの人が手伝ってくれた。

ありがたかった。

お礼にお昼ごはんはワタシが出すことにした。
毎日、暗い作業の中でもファストフードや出前で楽しい昼食だった。
お店に対する感謝の気持ちを込めて支店の閉店処理は思う存分出来た。

 

本店の閉店処理は終わっていたがワタシには心残りがあった。
形だけの整理のような気がしてた。
もう使わない什器だし商品を並べることもない棚だから
という感じの整理だと感じた。

 

みんなに言った。

「強制ではありません、希望者だけでいいです
無給ですが、もう3日間、後片付けしませんか?」

 

みんながワタシを本店の最後の店長にしてくれた。

 

3日間、お店に対する感謝を込めて整理をした。
この店で働いてきた自分に対する誇りも確認できた。
これで思い残すことなくお店を去る事ができる。

 

後日「閉店したお店でこんなにきれいなお店はない」って言われた。

 

みんなに対してありがたいという気持ちが溢れる。

 

スパルタ的というよりパワハラ的ともいえるような運営で狭小な器のワタシを
みんなが店長をさせてくれたんだなって思った。

 

すべての閉店作業が終わり、寄せ書きを交換していた。

 

ワタシも頂いた。
その中にこうあった。

「この人怒ってんの?といつも思ってた。
でもいつの間にか、店長に染まっている私がいた」

ちょっとはワタシもいいことを言ってきたのかな?

 

店長としての最後の仕事は推薦状を渡すことだった。
スタッフ全員に次の就職先で役に立つかもしれないっていう推薦状を渡すこと。

 

褒め言葉なんて苦手で言ったこともないワタシが
全員に良いところを書いていた。

 

不思議だけど当たり前です。
みんな誇りに思える仲間だから。

 

破産した会社の店長の推薦状が役に立つとは思わないけれど。
前に進むのに必要な自信と謙虚さを失わないような
推薦状を渡すことが出来たと思う。

最後まで顧客第一主義で面倒な作業も心を込めて行った。
破産した会社、店舗といわれないような後始末をした。
胸を張って誇れる仕事をした。

 

それでも、お客様から閉店を惜しむ声をワタシは聞かなかった。
今でもあれだけのレベルのお店はなかなかないよって思うけれど。
いい店だったねっていう声は聞かない。

 

顧客第一主義でやってきたあれは何だったのだろうと思う。

 

お店がなくなってもお客様にはあまり影響はないようです。
それはそうでしょう。
代わりになる競合店はいっぱいありましたから。

 

閉店して思った。

 

お店はお客様のためのものではなく従業員のためのものです。

お店がなくなってもお客様は全く困りません。
お店の代わりなんていくらでもあります。

 

従業員は違います。

お店がなくなれば
従業員は明日からの生活に困ります。

お店がなくなれば
従業員は自分の居るべき場、自分を活かす場もなくなります。

 

だから
お店はお客様のためではなく、無くなったら困る従業員のためにあるのです。

 

そして
顧客第一主義はお客様のためではありません。
大切な従業員が幸せに生きていくためのものです。

顧客第一主義はお客様からありがとうと感謝されて無上の幸せを感じるためのものです。
顧客第一主義は他のお店よりも当てにされて豊かになる原資をいただくためのものです。
顧客第一主義はもっと学んでお客様の喜びをふやして自分の成長を喜ぶためのものです。

これが
閉店してわかった!
ワタシが従業員こそ大切だから顧客第一主義にする理由です。

 

 

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