加賀友禅職人に金沢の伝統工芸「加賀友禅」について聞いてみた
金沢で生まれ育ちながら金沢の伝統工芸を全く知らなかった私。
地元の人ほど疎いとはよく言ったものです。
瑞々しい詩を創る加賀友禅の職人さんに直にお話を聞く機会がありました。
今なお金沢の伝統工芸として脈々と生きている「加賀友禅」について聞いてみました 。
目次
そもそも友禅染ってどういうもの?
友禅染は「糊で色が混ざらないように防染した、きものの模様染めの技法」のことなの。
もっと簡単に言うと手描きでの染め方の一つということよ。
江戸時代に奢侈禁止法(贅沢の禁止法)がでて、絞りや刺繍などの技法が禁止になったの。
それで京都の扇絵師だった宮崎友禅斎が着物に手描きで柄を描いたのが友禅の始まりと言われているのよ。
友禅染は奢侈禁止令によって豪華な織物や金銀の摺箔が使えないきものに不満だった町人達にはとても歓迎されたらしいわよ。
その手描きの技法を「宮崎友禅斎」が初めたので、その名前を取って「友禅」と呼ばれているの。
京都のものを京友禅、金沢のものを加賀友禅と言っているのよ。
それら土地にはもともと染色の技法というものはあったの。
宮崎友禅斎がそれらの染色の技法を土台に友禅染という革新的な模様染めを始めたということね。
宮崎友禅斎は京都にいたのにどうして金沢にきたの?
宮崎友禅斎は京都の知恩院前で扇絵師をしていて34歳ごろ染色にも携わって京都で染め技術を考案したといわれているのよ。
60歳ごろに金沢に移り住み金沢で加賀友禅として染め技術を確立したとされてるけど
どうかなって私は思ってる。
晩年に金沢に来て、紺屋頭取の黒梅屋のもとで染め衣装の下絵を描いていたと伝えられているのよ。
金沢に来たのは実は石川県の能登穴水の生まれという説があるのよね。
それで年がいって故郷近くに帰ったということなのかな。
ありそうじゃない。
加賀友禅ってどういう特徴があるの?
加賀友禅にはいくつかの特徴があるの。
1つ目は文様が絵画調で自然や古典をモチーフとしていること
2つ目は配色はおおむね多彩で加賀五彩を基調としている
加賀五彩とは、藍、臙脂、黄土、草、古代紫の5色のことね。
3つ目は自然のままということで虫食いや先ぼかしの技法が用いられているの
こういったところかな~
虫食いっていうのは葉っぱが虫に食われて凹んでたりするでしょ・・・あれ
きれいな形よりも自然のままにということが大事だったのね。
先ぼかしというのは柄の外側から内側へ向かってぼかしていくこと。
・・・?・・・わかなんない?
柄の外側は色がくっきりで内側に向かってグラデーションで色が薄くなっていくこと。
これでわかる? ! よし!
他にもあるんだけど、おおまかなところではこういう特徴ね。
加賀友禅の制作工程は主な工程だけで9つあって、すべての工程で熟練の技術が必要なのね。
私のやっている「彩色」というのは工程の中心的な作業なのよ。
石川県の人ってこういう技術は得意なのかもしれないわね。
日本の金箔の99%をつくる金沢金箔でも地道で神経を使う作業なのよ。
昔は冬に雪に閉ざされて外では何もできなかったから家でじっくりとやれたのかもね。
だからこそ
一つ一つの作業に根気と手間をかけて仕上げる手描き友禅は高いのよ。値があるのよ。
わかるでしょ?
わかるでしょ! はい!
加賀友禅と京友禅はどう違うの?
宮崎友禅斎は京都で京友禅を興し、晩年に金沢に来て加賀友禅を興したって説明したわよね。
60歳ごろに金沢に移り住み金沢で加賀友禅として染め技術を確立したっていわれているけど私はどうかなって言ったの覚えてる?覚えてない?
思い出した?・・・ま、いいか。
私はね京友禅よりも加賀友禅の方が技術的に上っていうのは違うって思ってる。
宮崎友禅斎が晩年に金沢に来て加賀友禅を興したのも間違いない。
技術も経験も京都の頃よりはずっとレベルが高くなっているとは思う。
でも京友禅よりも加賀友禅が上っていうことはないと思うのよ。
金沢の人からするとそう思いたい気持ちはよくわかるけどね。
確かに友禅は宮崎友禅斎が始めたのだけど、それには土台となる土着の染色技術があったの。
京友禅には京都の土着の染色技術と文化、加賀には加賀の土着の染色技術と文化があったのよ。
その違いが京友禅と加賀友禅の違いだと思うのよね。
その違いは着物になってしまうと通人といってもなかなか難しくて、簡単にはできないみたいなの。
でも、まあ一般的にいわれている京友禅と加賀友禅の違いは次のようなことよ。
配色の違い
加賀友禅は、「加賀五彩」とよばれる藍・黄土・ 臙脂(えんじ)・ 草・古代紫という落ち着きのある濃い五色を使っているから、京友禅よりも沈んだ色調でメリハリの付いた配色になっているの。
だから、加賀友禅の写真映りはいいって言われてるわ。
京友禅は全体的に色数を多く使わないので淡い上品な配色が中心なのね。
柄、モチーフの違い
これが一番大きな違いだと思うんだけど加賀は武家の文化で京都は公家の文化なのよ。
加賀友禅は前田家の武家文化のなかで生まれた技法なのでシンプルで落ち付きのある手描きの絵画調の柄が多いの。
京友禅は、公家文化のなかで生まれた技法なので刺繍、絞り、金箔などを使って派手で華やかな着物になっているの。
模様についても加賀友禅は絵画調で、着物の柄全体が絵のように描かれるの、自然描写が基本で、写実的ということね。
京友禅は模様が御所車、扇面など図案化された柄の組み合わせだったり、花柄でも図案化されたり図案調だということよ。
ぼかし技法の違い
ぼかしの技法でも違いがあるわ。
加賀友禅は、ぼかしの技法が比較的多くて、花弁の外側をぼかすの。つまり外側が濃く内側にいくほど薄くなるぼかしっていうことね。
加賀友禅にどうしてぼかしが多いかというとより絵画的になり、立体感もでて写実的になるからよ。
京友禅はぼかしの技法は少なくて、花弁をぼかす場合も中心をぼかすの。つまり内側が濃く、外側にいくほど薄くなるぼかしっていうことね。
わかると思うけど、加賀友禅と京友禅ではぼかしの方向が反対なのよ。
虫喰いの表現の違い
面白いのは虫喰いっていうこと。
虫喰いっていうのは草木の葉っぱの虫の食べた跡のことよ。
加賀友禅は、自然描写が基本なので、あえて虫喰いなど綺麗じゃないものも柄に入れるの。
これが面白いのよ。ただし全ての加賀友禅に虫喰いがあるというわけではないからね。
京友禅は、図案化された柄なので虫喰いなんてものはないわ。京都の公家や豪商は豪華絢爛が好みだから虫喰なんてとんでもない。武家好みの落ち着いた文化で求められる加賀友禅の美しさは違うってことね。
まとめ:
加賀友禅職人に金沢の伝統工芸「加賀友禅」について聞いてみた
加賀友禅職人に金沢の伝統工芸「加賀友禅」について聞いてみました。
忘れないうちにまとめておこう。
加賀友禅とは
糊で色が混ざらないように防染した、きものの模様染めの手描き技法のこと。
京都の扇絵師だった宮崎友禅斎が京都と金沢で手描きの技法を始めた。
宮崎友禅斎の名前を取って京都のものを京友禅、金沢のものを加賀友禅となった。
宮崎友禅斎はどうして金沢にきたか?
宮崎友禅斎はどうも石川県の出身だったらしい。
故郷に友禅を飾ったじゃなくて、錦を飾ったのかな。
加賀友禅の特徴って
1つ目は文様が絵画調で自然や古典をモチーフとしていること
2つ目は配色はおおむね多彩で加賀五彩を基調としている
加賀五彩とは、藍、臙脂、黄土、草、古代紫の5色のこと。
3つ目は自然のままということで虫食いや先ぼかしの技法が用いられている。
一つ一つの作業に根気と手間をかけて仕上げる手描き友禅は価値があって高い。
加賀友禅と京友禅の違いは?
加賀は武家の文化で京都は公家の文化、その違いが友禅に現れている。
配色
加賀友禅は、「加賀五彩」の藍・黄土・ 臙脂(えんじ)・ 草・古代紫を使って落ち着いた色合いになっている。京友禅は全体的に色数を多く使わないので淡い上品な配色。
柄、モチーフ
加賀友禅は絵画調の柄で写実的な自然描写の柄、京友禅は図案調で刺繍、絞り、金箔などを使って派手で華やかな柄。
ぼかしや虫喰い
加賀友禅と京友禅ではぼかしの方向が逆、京友禅には虫喰いはない。